<11/3 追記>
「若い人の将来を考えてあげてほしい」「今回の反対は高齢者のせいね」
というお声をいただきます。
これはいずれも「まちがい」であると私は考えます。
街頭演説でも訴えましたが、「大阪都構想の対案」は「逆都構想」です。
つまり、「大阪都構想」は”大阪市を大阪府に吸収させる”案で、
私の提唱する「逆都構想」は”大阪府から権限と財源を大阪市に移す”案です。
これは両方「(非効率な2重行政があるとしたら)それを解消する」効果を持ちますが、
前者は住民投票が必要で莫大な税金がかかるのに対して、後者は議会の議決だけでOKです。
「大阪都構想」は大阪市から権限と財源がむしりとられるのに対して、
「逆都構想」は中二階である大阪府が、大阪市に対して余計なことができないよう、大阪府から権限と財源を取り上げるわけで、大阪市が限りなく独立に近い形となり、大阪市独自の住民サービスや街づくりができます。
それに「逆都構想」は、これまで進めてきた地方分権の理念に合致し、
古臭い中央集権型の「大阪都構想」は先祖返りにすぎません。
「若い人の将来を考える」のであれば、断然「逆都構想」が役に立ち、
必ずしも経済発展が約束されているわけでない「大阪都構想」に対する課題の多さやリスクの高さを認識しておられた「高齢者の方々」は賞賛されこそすれ、非難の対象とすべきではありません。
「逆都構想」もバラ色ではありません。議論・検討していかなければならないことも多々あります。ただ「大阪都構想」よりは、少なくともコストもかからないし、やり直しが効くという点ではマシだと思います。
念のため、これを追記しておきたいと思います。
では本題へ。。。↓↓
みなさま、こんにちは。茨木市議会議員のいなばみちのぶです。
10年にわたり、2度の住民投票を経て論争が続けられてきた、いわゆる「大阪都構想」ですが、
11月1日に大阪市民の皆さまを対象に住民投票が実施され、
「賛成 675,829 反対 692,996」の反対多数で廃案になることが決定しました。
投票率は2015年の1回目の住民投票と比較してマイナス4.48ポイントの、62.35%。
賛否の差は前回と比較して、反対票が6,426票増えるという結果になりました。
投票率が下がって、かつ反対票が7割近く増加したということは、
5年前より「反対が増えた」ということだと思います。
興味深いのは、「前回、賛成が多かった区」と「前回、反対が多かった区」は、ほぼそのまま同じ結果となっており、
唯一『東成区』のみが、「賛成多数」から「反対多数」区へ変更になりました。
あとは票差ですが、これは人口も投票率も違うので比較すること自体にあまり意味がないのですが、
差が開いたか、縮まったかを興味本位で調べてみたところ、どうも総じて賛否が均衡点に近づいているような感覚です。
とはいえ、東成区のように賛否が逆転した区もあり、港区や阿倍野区のように反対票に大きく振れたところ、鶴見区のように賛成票が伸びたところなど様々です。
9月ごろの調査では最大14ポイントほど賛成派がリードしていました。
反対する陣営には絶望の色が浮かんでいました。
自慢するわけではありませんが、私は「大丈夫。ちゃんとやれば絶対に勝てる」と色んな人に言っていました。
(世論の動きについては、日経ビジネスさんが興味深い分析をしておられます。URLはコチラから→https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00067/102300040/)
それが直近で反対に大きく振れた理由は、この分析にもあるように、
『未定・賛否不明層が反対に傾いた』からだと思います。
ではなぜ、未定・不明層の方々が反対に振れたのか?
ひとつの大きな要因は、毎日新聞の『大阪市4分割ならコスト218億円増 都構想実現で特別区の収支悪化も 市試算(10/26)』という記事でしょう。
(https://mainichi.jp/articles/20201026/k00/00m/040/061000c)
この記事で、「…標準的な行政サービスを実施するために毎年必要なコスト「基準財政需要額」の合計が、現在よりも約218億円増えることが市財政局の試算で明らかになった。」と報じました。
ポイントは「市財政局の試算で」というところで、反対派が勝手につくった数字ではない、ということです。
つまり自分が管理監督している機関が出してきた数字であり、「デマだ」と一蹴することはできません。
否定するためには、説明責任を果たさなければならなかったのです。
私はこの「コスト218億円増」という報道を「大阪市財政局」という大阪市の中枢機関ともいえるところが出してきた勇気に感動したと同時に、
「コレを出した人はタダではすまないだろう」と思いました。
明らかに権力者である大阪府知事や大阪市長、大阪府議会、大阪市会の大多数を敵にまわしたからです。
維新の会の対応は迅速でした。
27日の会見時点では「取材内容をきちっと書いてある」と認めていた財政局は態度を180度変換。
29日に馬場信幸衆議院議員が国会でこの問題に言及「大誤報だ」と大騒ぎし、大阪市がホームページに誤りであったと記載し、財政局長が謝罪記者会見となったのです。
この記者会見では、誤った数字を出した理由を、なんと「記者の熱量に押されてやってしまった」と、前代未聞の理由かつメディアのせいにしたのです。
当然、その犯人とされた毎日新聞や日経新聞の記者は驚愕し、他のメディアからも「それはおかしい!」「撤回せよ」と大騒ぎになり、記者会見が中断することとなりました。
結局、この理由は最後まで撤回されず、いま法的手続きも検討されていると聞いています。
客観的に聞いていて、
①役所のそれも中枢機関が「記者の〇〇さんの熱意にほだされて、ウッカリ間違った試算を公表しちゃった」ということはあり得ない
②当事者が翌日の会見で追認したことを、わずかならまだしも、180度転換し、なおかつ他人のせいにするということ自体、「中で何かあった」ことを容易に推測させる
③仮にそれが事実だったとしても、部下の責任はリーダーの責任。しかし松井市長は記者会見に現れず、現場の職員を生け贄にした
ことで、「未定・不明層の中の良識的な人々」を敵に回したのではないでしょうか。
そもそも、「…標準的な行政サービスを実施するために毎年必要なコスト」をあらかじめ算出しておくのは当然のことだし、それすらしていなかったのか!となった方も少なからずいらっしゃったのではないでしょうか。
もっと言えば、それを出さなかった理由として「算出係数がわからないから」は幼稚な言い訳です。
係数がわからなければ、現在のベースで行うのは当然で、
現に「都構想の経済効果」は算出しているわけで、神様じゃあるまいし、未来の効果にどんな新しい係数を用いているのでしょうか。
それに将来の経済効果を見通せる千里眼があるのであれば、将来のコストをも見通せて当然でしょう。
くどくなりましたが、この「コスト218億円増問題」は光速でひろまり、鎮火させるには遅く、影響を抑えるにはインパクトが大きすぎました。
同時に、吉村知事・松井市長そして維新の会が「ほかにも何かを隠しているのではないか」という疑念を大阪市民のみなさまに抱かせるには十分でした。
それはファクトチェックを恐れたのか、住民投票前の説明会や松井市長などの記者会見の動画も一切ネットから消し去り、非公表としたこと、
「メリットのみの説明で、デメリットやリスクはまったくと言っていいほど説明しない」姿勢に表れており、それらの疑念を助長するガソリンとなってしまいました。
やはり「真摯で丁寧な説明」こそが勝利への近道であって、今回のように「だましてでも押し切る」というやり方は、子どもには通用しても良識のある大人には通用しません。
その意味で、今回の住民投票はデメリットやリスクは隠し、コロナ対策で名をあげた吉村知事人気と維新人気で、なし崩し的に乗り切ってしまおうという姿勢が明らだったように思います。
他にもいろいろ思いつくことはあるのですが、あとひとつ挙げるとすれば、『公明党』への対応でしょう。
大阪府内の公明党の衆議院議員が立候補している選挙区を人質に取り、「賛成しなければ維新の対立候補を立てる」と脅迫したことは間違いだったと思います。
近々、遅くとも1年以内に衆議院議員選挙があることから、この人質作戦が効果を発揮するのは、このタイミングでの住民投票しかありませんでした。
衆議院議員選挙が終わってしまえば住民投票に無理やり協力する意味はなく、そこから数年間は交渉が滞ってしまうからです。
以降、公明党議員団はゴロっと賛成に転じ、2015年の住民投票の際には強力に反対を唱えていた議員の方のSNSを見ると、驚きとため息と、そして同情の気持ちが沸き起こってきたものです(本当に苦しい選択だったと拝察します)。
有名な三国志演義に「孟獲の七縦七禽」という話があります。
軍師の諸葛亮孔明が南蛮征伐を行う際、敵の孟獲将軍を7度捉えて6度解放し、「納得がいくまで挑戦してこい」と7度目も解放しようとしたとき、孟獲がそれに感動して心から服従を誓ったという話です。
もちろん公明党は野蛮な党ではなく、これはあくまでたとえ話ですが、
人の胸ぐらをつかんで何かを強要することは、たとえ一時それに従ったとしても相手の心に反抗の芽を植え付けます。
それまでも2014年に橋下徹氏が「宗教の前に人の道がある」と言ったり、2018年に松井市長が密約文書を公開するなど、”力”による外交を行い、公明党の支持層からかなり怒りを買っていたようです。
私にとって大阪維新の会は、こうした”力”を使って突破してくる手法を多用するため、少し怖いというイメージがあります。
こうした「公明党の変心」はメディアやネットでも大体的に報じられたため、
その維新の手法を評価しなかった方もまた少なからずいらっしゃっただろうと思います。
こうした禁断手法は国民の大多数が正義と認めるようなことに用いるのであればまだしも、多用すると正義とは別のイメージを抱かれるかもしれないですね。
ただ断っておきますが、茨木市議会の維新の議員さんたちは、きちんと話し合いができる方々です。
なんかまとまりがなくなってきたのでこれで終わりにしたいと思いますが、
いずれにしても、これでいわゆる「都構想」は廃案になります。
これで大阪市が持っているイザという時のための貯金(財政調整基金)約1400億円を取り崩しても大丈夫ということになりました。
こういった報道もあります。
「大阪都構想関連に公金100億円超 府市13年以降に 人件費や選挙など」
https://news.yahoo.co.jp/articles/ffabc90550e812fc07e42c97b60b75284ad32a76
住民投票の影響もあって大阪では感染者が激増しています。
今度こそ、400億円くらいを投じて、コロナで苦しむ方々や子どもたち、商売をされる方々、日常生活に不安を抱える方々などのために、貯金を使って不安を取り除いていただけるようお願いしたいと思います。
「大阪を良くしたい」という気持ちは、維新であれ自民であれ公明であれ、他のすべての党であれ同じだと思います。
要はその間の利害調整がうまくいくかどうか。そしてそれが、地域にお住いの皆さまのプラスになるかどうか。
私たちも我田引水にならないよう、公益を最優先にこれからも活動を続けていきたいと思います。
今回は反対された方も、賛成された方も、それぞれの運動に参加された方も、
本当にお疲れ様でございました。
私も今後は「次なる茨木」の創生に力を注いでまいります。
ぜひともご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
#都構想 #大阪市廃止 #コロナ #茨木市議会 #茨木岸会議員